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共催セミナー Vol.1

×  港屋株式会社

多様性あふれる社会の海で、

生徒たちを航海士として育てるために。

国際社会で「日本人として」活躍するために必要な資質とは?

2017年9月8日(金)

開催レポート(文・高田/編・五島)

共催セミナーとは? 

2017年8月28日、東京都港区のジャパンタイムズ・ニフコホールにて、株式会社ジャパンタイムズと港屋株式会社の共催セミナー「多様性あふれる社会の海で、生徒たちを航海士として育てるために。〜国際社会で”日本人として”活躍するために必要な資質とは?〜」を開催いたしました。

 

■ セミナー開催に至った経緯

港屋は、子どもや若者が「自分を自分たらしめる選択」ができるように後押しするため、コーチングをいかした中高生向けのプロジェクト創出支援と、学校の寄付金ファンドレイジングの仕組み提供の2本柱で学校教育機関のお手伝いをしています。私たちが取り組むこれらの事業を通して、最近2つのことが見えてきました。 

 

1つ目は、日本国内においては、日本という国や自分が暮らす地域、自分自身についてのアイデンティティを明確に確立しなくても過ごせてしまうために、日本人中高生の多くが、日本や自分たちの地域、自分自身についてよく知らずに過ごしていること。

 

2つ目は、中高生たちが出て行く社会は多様性に溢れているにも関わらず、生徒が長い時間を過ごす学校の中では、出ていく先の社会と同じような多様性を持ち込みづらい現状があるということ。

 

この2つの気づきから「国際社会で『日本人として』活躍するために必要な資質とは?」という問いを立て、この問いで使われる言葉の定義から、多様な経験を持つ登壇者と学校現場の先生方で、ディスカッションを通して考えを深める場を設ける運びとなりました。

今回、日本の伝統文化に通ずる方、日本人として外国籍の方と働く方、外国人として日本で働く方、インターナショナルスクールで働く方など、多様な立場の方々をお招きして、学校現場で活躍される先生方と一緒に、考えを深める場を持たせていただきました。

■ パネリスト

・岸川雅範/神田神社(神田明神) 権禰宜

・Patrick LAUDON/合同会社LifeCrack 代表社員

・安居 長敏/学校法人アミークス国際学園 学園長

・高橋敏之/『The Japan Times ST』 第11代編集長

■ ファシリテーター

・伊藤俊徳/NPO法人NEWVERY 理事

・五島希里/港屋株式会社 代表取締役

■ 司会

・沼田雄介/株式会社ジャパンタイムズ 販売部長

(五十音順・敬称略)

当日は、以下のようなプログラムで進行いたしました。

■ プログラム

ご挨拶

パネルディスカッション

 第1部 国際社会で日本人として活躍するために必要なこととは?

 第2部 そのような人材を育てるために、どのような学びが必要か?

サービスのご紹介

​懇親会

以下、パネリストのみなさまの印象的なメッセージを、抜粋してお届けいたします。

岸川様/神田神社(神田明神) 権禰宜

 

「僕から見ると『国際社会の中に』日本人がいます。国際社会と日本は別物ではありません。外国の人が日本の文化に注目することによって、日本文化が『日本社会で』注目されます。自分たちの日本文化を知るためには海外の人の力が必要です。明治維新でも、アメリカのグラント将軍が日光を見て素晴らしいと褒め、それを機に、日本人に『神社仏閣を大事にしよう』という思いが芽生えました。国際社会に注目され、自分たちの日本の文化を調べ、外に伝えていく。この双方向のやりとりがそのまま国際社会に入って行くことになると思います。今はまたオリンピックが控えているので、外国人が日本に注目しています。今はチャンスです。」

 

「神田明神の各神主は、それぞれが個人商店のように位置づけられており、実は自由度が高いのです。だからこそ『IT情報安全守護シール』や『アニメとのコラボ』などの発想が出てきました。伝統文化というと昔から変えてはいけないイメージがありますが、実はどんどん変わるものです。たとえば『絵馬』は、昔は本当に馬を奉納していました。でもそれでは大変だから、馬の絵を描いて奉納するようになり、現代は絵ではなく文字で自分の願いを書く方が多くなりました。このように、変わるからこそ継承されていきます。子どもたちにもどんどん伝統を作り上げて欲しいと思います。自由度の高い交流の場を作り、考えを深める場があるといいのではないでしょうか。」

LAUDON様/合同会社LifeCrack 代表社員

 

「一言で言うと自己認識が大事です。私はフランス人として、日本やアルジェリア、ブルキナファソなど様々な場所で仕事をしてきました。その中で『自分の軸は何か?』『私は何に反応しているのか?』などの問いを立てて、自分のことを知る必要がありました。自己観察ができないと他を観察できないからです。今回のパネルディスカッションでは、問いが『日本人として』なので、日本人の文化的背景と照らし合わせて己を知っていく必要があります。個性とは、いろんな『枠』あってそれが足されていって、自分ができ上がります。自分がどういった『枠』の重なりでできているのか自己認識をし、相手はどういう『枠』で生きてきて、今の個性が成り立っているのか、相手に聞きに行く『好奇心』と『聞く力』が必要だと思います。」

 

「豊かな表現をするための良質な思考を育てるのが必要だと思います。自分の文化はどこの積み重ねからきているか、自分はどういう人間か、自己観察する。たとえば『国語とは何か?』などをテーマとした哲学ワークショップ的なことが常に行われていて、考えるトレーニングを行うことなどがいいと思います。質問を通して、物事についての好奇心を育てることができます、そしてそれが、自分に対する好奇心を持つことに繋がっていきます。」

安居様/学校法人アミークス国際学園 学園長

 

「国際社会でコミュニケーションを取るには、英語の力が必要だと思われやすいです。あるに越したことはないですが、絶対条件ではありません。私がいるアミークス国際学園では教員の42%が外国人で、日本を入れて16カ国の先生が生徒を教えています。僕は英語が堪能ではありませんが、現場のトップとして、マネジメントする側として受け入れられていることを考えると、人が好きでオープンマインドであることが肝ではないかと思います。オープンマインドとは、自分に自信を持つことです。あれもこれできる私ってすごいという自信ではなく、『自分は自分でいいんだよ』という自分に納得している意味での自信を指します。日本人と他の国の人は違いません。勝手にこっちが『日本人枠』を作っているだけで、どこの国でも同じ人間という視点に立てば違いがありません。日本でも、沖縄と私の出身地である滋賀では、方言もバックボーンも違います。バックボーンが違ったとしても、基本的には一緒です。同じ人間であることに違いはありません。」

 

「自分の考えを伝える場をいかにたくさん作るか。アミークスでは小学校1年生の生徒に、1分間スピーチをする場を作っています。語学として評価される英語の場ではなく、自己表現の場です。私もスピーチをする機会がありますが、大人がたどたどしい英語でもいいから、一生懸命話して背中を見せていくことで、『英語が話せるとこんなすてきなことがある』と、動機付けができる実感があります。」

高橋様/『The Japan Times ST』第11代編集長

「日々、外国人スタッフと仕事をする中、英語になっても、英語に負けないだけの発信力、譲れない部分は譲れないと伝える勇気が大事です。『グローバル』の言葉の意味は広く、定義は人によって異なりますが、私は『海外のどこに行っても友達を作れる力』だと思います。」

 

「国際舞台で活躍するのは、何らかの専門性を突き詰めた人だと考えます。英語ができなくても美味しい日本料理ができれば世界で引っ張りだこになるでしょう。英語もできるに越したことはありませんが、その人の個性を枠にはめず、どんどん伸ばしてあげるのが一番です。そして発信力が大事です。仕事で英語講師をすることがありますが、テキストを理解するところで学習が止まっていると感じることがあります。いかに英語で発信していくかだと思います。」

■ 参加者の声

「中高の英語力を求められるが、その前に日本語ができていない生徒が多い。1分間自分について話せない。まずは自己認識をするマインドを作らないといけないと感じています。」(国語科教員)

「オーストラリアへの修学旅行で『日本らしさ』をみんなで調べ、現地で英語で伝えるワークをしました。英語が話せる子はいないですが、幸せそうで楽しそうな表情をしていたのを思い出しました。」(情報科教員)

「自分たちの置かれている環境が当たり前すぎて、それを発信することができない現状です。無理矢理でも自分について話すことを体験して、相手のリアクションを見る。外から見た日本の良さを知り、国内や自分が住んでいる地域の良さを発信していけばいい。そうすることで地域や自分への自己肯定感が出てくる。これからそんな時代になっていくんだな、という可能性を感じました。」(英語科教員)

■ セミナーを終えて(港屋株式会社)

​今回港屋では、私たちが活動する中で見えてきた「多様性」という大きなテーマについて、学校現場の皆さんと「一緒に考える場」を設けさせていただきました。

​それぞれにとっての「多様性とは何か」に対応する答えを見つけ出すには、あまりに短い時間であったと思いますが、今回ご参加がかなわなかった方からも「ぜひ一緒に考えてみたかった」と、熱いメッセージを多数いただいております。

これからも港屋では、社会と学校の間に心地よい風を届けるべく、さまざまな機会をご用意してまいります!

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